SDGsはきれいごと?

ブログ
2022.06.29

日本におけるSDGsの伝わり方

物事の捉え方、考え方は人それぞれ自由なので、いろんな意見があるのは当前だと思います。

私は、SDGsを推進するにあたって「産官学民金の連携」が必要だと思っています。

その中で一つでも欠けると、このSDGsという「難問」は絶対に解けないと思っているからです。

なので、その中でも特に取り組みが強く求められる「産」、つまり企業へのSDGsの取り組みをサポートさせてもらい、多くの企業経営者の方と意見交換をしています。

そういった活動の中で「SDGsはきれいごと」とか「SDGsは矛盾だらけ」といった、SDGsへの批判的なご意見も少なくはありません。

私は、これには日本におけるSDGsの「伝え方」「伝わり方」に原因があるのではないか、と考えています。

少し厳しい言い方になるかも知れませんが、我々日本人の多くはSDGsを「知ってるつもり」になっているのではないでしょうか?

つまりSDGsは、我々日本人に「わかり易く伝わり」がゆえに「その本質が伝わっていない」という矛盾が生まれているんです。

日本におけるSDGsの認知度

SDGsは2015年に国連で採択され、すぐに日本語訳されています。

博報堂のボランティアグループによるこの日本語訳は、目標1「貧困をなくそう」、目標14「海の豊かさを守ろう」などすばらしい日本語訳で、非常にシンプルでわかり易く、聞けば我々日本人はスッと理解できるように訳されています。

私が所属するSDGs推進団体で一般人向けに実施した「SDGs認知度アンケート」では、「SDGsを知っていますか?」という項目において、100%の人が「知っている」と答えました。

ただし、「SDGsに取組んでいますか?」という項目に対して、「取り組んでいる」と答えた人はたった40%弱でした。

60%以上の人が「SDGsは知っているけど、取り組みは何もしていない」と答えたのです。

その多くの理由が「何をすればよいのかわからない」でした。

日本独特の「易しく伝える文化」

日本では、何かを伝えるときに、「どうすればわかり易く」「スピーディーに」「かつ一般的に」相手が理解できるのかを考え「物事を易しく伝える」という文化があります。

その物事のありのままを、その背景にある事実をそのまま、というよりも、この伝える相手に配慮した物事の伝え方というのは、日本独特の「おもいやり」精神の一つで、すばらしい文化だと思っています。

この独特な言い回しや、オブラートに包んだ表現のせいで、世界中の言語の中で、日本語は一番難しい言語だといわれているのかもしれません。

新しいテクノロジーや新しい商品・サービスの広報においても、日本では、「簡単」「便利」ということを、より多くの人にすぐ理解できるようにということに注力するため、一言でわかる「キャッチフレーズ」のインパクトや見た目で伝わる「ゆるキャラ」の活用などがポイントになります。

そのテクノロジーや、商品・サービスが生まれた背景などを深く理解する必要はありません。

SDGsという「難問」

先にも述べましたが、SDGsの日本語訳は非常にわかり易く、一つ一つの文言が全ての日本人にスッと入ってきます。

ただし、このスッと入ってくること、スッと理解できることというのは、それゆえにその背景にある『深刻さ』が伝わりづらい、という側面があります。

SDGsとは本来、すごく理解が難しい概念です。 

特に我々日本人のような、いわゆる「貧困ではない」先進国で暮らしている人々は、「環境汚染」や「生物多様性」「飢餓」など、そもそも危機感を覚えにくく、SDGsで掲げる難問を「じぶんごと」として捉えづらい環境にいます

なので「何をすればよいのかわからない」ことが当たり前なんです。

本当の意味で「わかる、知っている、理解する」ためには、『理解する努力』が絶対に必要です。

17個の目標をただ知っているだけでなく、その一つ一つを紐解き、その目標ができた背景や、ターゲット、指数を理解したうえで、突き詰めて考えないといけません。

わたしもまだまだなので、いろんなビジネスパーソンの方々からお話しを伺ったり、日々理解する努力をしています。

「SDGsはきれいごと」とか「SDGsは矛盾だらけ」と思う前に、まずは世界の現実を直視し、どういった問題が今起きていて、それが今後どういった影響を我々に与えるのか、またその問題を解決するために、今の自分は何ができるのかを真剣に考えて、初めてSDGsのことを「知っている」といえるのではないでしょうか。

そしてその問題を「じぶんごと」として捉えることができれば「SDGsは知っているけど、取り組んではいない」ということが、どれだけ矛盾しているかに気が付くと思います。

SDGsは「難問」で、その取り組みには「痛み」が伴います。

ただし、その取り組みが、これからの時代を生き抜くために必ず必要になります。

そのことに早く気付き、SDGsへの取り組みを検討してほしいと思っています。

記事一覧

CATEGORY