製造業にとってのSDGs
製造業といっても、さまざまな種類の製造業がありますが、2021年度エネルギー庁による企業とエネルギー消費量の調査において、製造業のエネルギー消費量は全業種の中で一番です。
SDGsにおいても、環境問題やエネルギー問題は大きな解決すべき課題となっており、つまりこれからの時代、エネルギー消費量の大きい製造業は、良い意味でも悪い意味でも注目される業種だと言えます。
昨今、大手製造メーカーがSDGsに関心を寄せ取り組みをスタートさせている背景には、SDGsへの取り組み自体が、さまざまな未来への不安要素を取り除くリスクマネージメントになるから、ということがあります。
またそのリスクマネージメントは、下請け会社や原材料を調達する過程、いわゆるサプライチェーンもその対象になってきているのが現状です。
製造業が取り組むべきSDGs
製造業と関わりのあるSDGsにおける目標は下記の4つです。
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に向けて製造業ができることは、エネルギー消費量を減らす、エネルギーを作り出す、エネルギー効率化を図ることだと思います。
具体的な取り組みとしては下記のような取り組みが挙げられます。
〇 製造工程における無駄なエネルギー消費をなくす
〇 社内で使う照明器具をLED証明へと切り替える
〇 商品の輸送方法や社員の移動手段を見直し、効率化を図り燃料消費を抑える
〇 社屋や工場の屋上に太陽光発電を取り付け、再生可能エネルギーを作り使用する
費用の掛かるもの、掛からないものもありますが、取り組もうと思えばすぐにでも取り組める内容のものもあると思います。
目標8「働きがいも経済成長も」とは、だれもが人間らしく生産性のある仕事をして、みんながよい生活を送れるよう経済成長していきましょう、ということです。
製造業としての具体的取り組みは下記が挙げられます。
〇 労働環境を見直し、従業員の安全性や生産性を向上させる
〇 DX(デジタルトランスフォーメーション)による、業務の効率化や生産性の向上を図る
〇 従業員のスキル向上を目指し、社内教育や社員研修を実施する
製造業における生産性の向上とは、つまり売上・利益に直結していて、生産性を上げることは持続可能な企業になるために、まず第一に取り組むべき課題だと言えます。しかもそれらはSDGsへの取り組みでもあるので、まさに一石二鳥ですね。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とは、新しい技術を開発し、災害に強いインフラを整備し、だれもが安心できる産業の基盤をつくろう、ということです。
製造業における具体的取り組みとしては、下記が挙げられます。
〇 企業経営におけるセキュリティ面を強化し、インフラの安全性を確保する
〇 IT技術を駆使し、新しい技術を取り入れる
〇 組織改革やDXを進め、イノベーションが生まれやすい環境をつくる
ITインフラにおけるセキュリティ対策といっても、これから取り組む企業にとっては、専門的知識とコストのかかるものです。
しかしこの対策がしっかり出来ているか、出来ていないかが、これからの時代を生き抜くための命運を分けることになるとも言われています。
目標12「つくる責任つかう責任」とは、生産者だけでなく消費者も、地球環境を守り、すべての人の健康を守るよう、責任のある生産行動、消費行動をとりましょう、ということです。
この目標に向けた製造業企業の取り組みとしては、下記が挙げられます。
〇 3R(リデュース・リユース・リサイクル)を意識した商品を作る
〇 不良品やロスを減らし、廃棄物を減らす
〇 商品の過剰梱包をなくし、廃棄物を減らす
〇 製造工程において生成される廃棄物の環境への影響を把握し、しっかりと対策をする
製造業企業には、つくる側の責任が問われるので、地球環境や人々の健康面を意識したものづくりが必要です。
そして、不良品やロスを減らすことは、企業の存続にも直結しています。
昨今、不良品やロス削減への取り組みは、SDGsの観点からの取り組みが最も効果的だと話す企業経営者の方々も増えてきています。
製造業がSDGsに取り組むメリット
製造業だけではありませんが、上記のように、エネルギー消費や地球環境のことを考えると、やはりSDGsとの関連性が高く、SDGsへの取り組みが最も問われる製造業。
では、SDGsに取り組むことは企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
まずは、ご存じの通り企業にとって「企業イメージ」というのは非常に重要で、SDGsへの取り組みはその企業のイメージ向上やブランディングに効果的に作用します。
現代の企業経営において、さまざまな場面でCSR(企業の社会的責任)が問われることは、経営者の方々は身に染みていると思います。
SDGsへの取り組みは、それ自体が戦略的CSRとなります。
とんな取り組みであれ、SDGsへの取り組みを積極的に発信することで、企業のイメージは良くなり、それに付随したさまざまなメリットが期待できます。
製品・サービスへの信用が高まり、また優秀な人材も集まりやすくなります。
他にも、投資や融資も優遇されます。
そしてなにより、SDGsへの取り組みは世界中で行われており、この課題解決への取り組みが新たなイノベーションを生み、新たなビジネスチャンスとなります。
実際に、小さいもので言えばプラ製品を紙製品へ、大きいものではガソリンを使わない自動車など、挙げればきりがありませんが、さまざまなSDGsに目を向けた課題解決につながる製品が世に出ています。
SDGsは言い方を変えれば、世界的な巨大なマーケットとも言えます。
SDGs自体は2030年という年限はありますが、学校教育でもSDGsへの教育が行われ、日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言している以上、今後SDGsへの注目度は増す一方です。
つまり、これからの企業活動において、SDGsへの取り組みは武器にもなり、防具にもなるということです。
今からでも遅くはありません。
自社を今一度見直し、SDGsへの取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。