なぜ問題なのか?
SDGsの目標14に「海の豊かさを守ろう」とあります。
海洋と海洋資源を守り、持続可能な形でこれから先も海を利用していこうという人々の思いで、海洋汚染の防止と削減、生態系の回復、また漁業、水産養殖業、観光業などの持続可能な管理など、10個のターゲットが設定されています。
実際、現存する海洋プラスチックごみは1億5000万tあると言われ、さらに毎年800万tが新たに流入していると言われています。
それらの海洋プラスチックごみは豊富な海洋資源にとって脅威であり、実際2019年に、フィリピンの海岸に打ち上げられたクジラの胃の中からは、40kgものビニール袋が出てきました。
クジラだけではなく、ウミガメ、イルカ、海鳥など様々な海洋生物が海洋プラスチックごみを餌と勘違いし飲み込んでしまい、消化不良で命を落としています。
海洋生物への被害だけではありません、漁業や水産業、また豊かな自然で成り立っている観光業などへも直接的、間接的な被害があります。
WWF(世界自然保護基金)の発表によると、アジア太平洋地域では年間で、観光業で6.2億ドル、漁業、養殖業などでは3.6億ドルもの損失があると言われています。
また波や障害物に削られた5mm以下のプラスチックごみは、マイクロプラスチックと呼ばれ、数百年もの間、自然分解されずに残り、それを取り込んだ魚や貝類を接種するわれわれ人間の体にも悪影響を及ぼすと言われています。
日本は海洋プラスチックごみの生みの親?
日本におけるプラスチック製品製造業は、10兆円を超える成長産業で、世界的にも過去50年でプラスチック生産量は約20倍に増大しています。
プラスチック製品は、金属などに比べ軽く加工も容易で衛生的なため、日用品、文具、おもちゃ、家電や乗り物、医療分野などその用途は幅広く、業界全体として底堅い成長が見込めるため、今後もプラスチック製品の生産は増え続けると思われます。
ただし、昨今のエコ意識の高まりにより、レジ袋の有料化やマイボトルの普及など、少しづつですがニーズが変化しており、企業もそれに対応すべく生分解性プラスチックなどの環境にやさしいプラスチックなど、CSR(企業の社会的責任)を意識した商品開発に今、力をいれています。
ただし現状、我々の生活からプラスチックをなくすことは不可能であり、日本のプラスチック廃棄量は一人当たり32kgと世界ワースト2位になっています。
日本政府の発表では、日本で排出されるプラスチックごみは年間約900万t、その内約775t(約86%)は有効利用しているとしています。
がしかし、実際にリサイクルされているのはその内約122万t(14%弱)だけで、約129万t(14%強)が海外へ輸出され、残る524万t(58%)は、大量の温室効果ガスを排出する「サーマルリサイクル」という処理方法で大量の化石燃料を使用し燃やされています。
2017年には、日本から『資源』という名で大量のプラスチックごみを輸入していた中国は、環境汚染を理由に輸入規制し、日本のプラスチックごみの行き場がなく困った事態になりました。
問題解決に向けて
海洋プラスチックごみを減らそうという動きは年々増加しており、2018年6月カナダで開催されたG7サミットでは、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関してより踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章」が謳われましたが、日本とアメリカは署名しませんでした。
世界中から非難を浴びた日本は、2019年に大阪で行われたG20サミットで「マリーン・イニシアティブ」を立ち上げ、次の3つの方針を発表しました。
①海洋プラスチックごみ対策アクションプラン
②プラスチック資源循環戦略(使い捨てプラスチックを2030年までに累計25%排出抑制など)
③海洋漂着・漂流、海底ごみの対策にかかる海岸漂着物推進法の基本方針の変更
しかし、その内容は具体性がなく、WWF(世界自然保護基金)はこれでは不十分だと訴えています。
企業に対しての廃プラスチック規制や、プラスチックごみの25%排出抑制に対する基準年が示されていなかったり、またそもそも25%排出抑制だけで海洋プラスチックごみ問題が解決できるのかも疑問です。
ただし、世間一般の海洋プラスチックごみに対する認知度は、SDGsの認知度とともに日本国内でも約80%と高く、今後確実にエコを意識したプラスチック製品への需要は高まり、企業も変化が求められています。
また我々も、プラスチック製品を使用する立場で、その責任の一端を担っていることを自覚し、今まで以上に3R(リデュース・リユース・リサイクル)を意識した消費を心がけることで、海洋プラスチックごみを減らす努力をするべきだと思います。
マイバックやマイボトルに続き、マイ食器など、さまざまなワンウェイ(使い捨て)でない製品が誕生し、それを持ち歩き、それが当たり前になっている日々がそう遠くないことを願っています。